彫刻家”井上公雄氏”の視点

11月14日文学館講堂にて、彫刻家井上公雄氏の「作家の生きざま」と題した講演が行われました。県内高校生美術部員を対象に身延高校美術教諭石田泰道氏主催の講演会には、200名近い美術部員が集まりました。

 「チャンスの神様は前髪しかない!通りすぎたらもうつかむ事ができない。だから、タイミングを逃さないように日頃から心がけていなくてはならない。」30代後半のコンペで大企業との一騎打ちがあり、手書きの企画書で見事に公共の制作を手にした井上氏の発言は圧倒的な説得力が感じられました。女子学生が多く、熱心にメモをとる姿もみられました。

 

 

 井上氏は、工場に勤めながらも絵を描き続け、若い頃に見つけた自分の中のその芽を独学で伸ばし、日本各地に留まらず世界をまたいで活躍するようになりました。会社を辞職した後に人間関係が上手く出来ないことを悩み、あてもない放浪の旅をしてみたり、『生物』の気配がない砂漠やシベリアを旅したこともあったそうです。常に『生ー死、虚ー実、有機質ー無機質』といった相対する普遍的な課題を持ち続けて、多くの後輩を生み出した今もなお進化し続けています。技術を身につけることに没頭し、堅い石を刻むためにいくつも傷をおった身体ですが、「石を通り越したい。難しい仕事ほど燃える。」のだそうです。道端に転がっている石、砂利・・・山の中の岩がけずられて何万年もの歴史を越えてここにあるというその存在感は、自然の輪廻を、さらには人間の歴史を想像させて彼を魅了し続けています。

 

 

「自分は、明日生きているからわからない。一瞬の中で真剣勝負したい。誰だって明日生きているかわからないんだ。だからこれを作品で表現していきたい。あきないでやり続けられるのは『適職』、自分にしかできないのが『天職』。この職業が天職であるという使命感を持って日々生きている。」

 

 

 

 講演会では、井上氏の話を聞いて「石の作品に取り組んでみたいがどんな石を選ぶのがいいですか。」等、前向きな質問が行き交った。「女性の身体(裸)をつくり続けるのはどんな意味があるんですか?」という質問には、「おれにとって女性の身体は、デッサンや制作を通して見えるもの/肌から感じるもの/体温・・・モノをつくる時のすべての基本だから。」笑顔の奥に一本の筋が通ったキラリと光る彼の生きざまを感じました。

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