人が生まれてはじめて関わる人間関係が最も重要だと思う。そのときの背景に左右されることも多いけれども、基本的に人のコミュニケーション形態は「相手のことを考えた行動や発言をするタイプ」であるか「自分のための行動や発言をするタイプ」であるか、どちらかのタイプに属していると感じる。子どもは成長過程においてはじめてみた人間関係を社会に出て試す時期がくる。その時に、前者の人間関係が一般的だと感じて育った子どもは人を信じることを前提に人との関わりをもち、スムーズに信頼関係をつくることができる。後者の人間関係が一般的だと感じて育った子どもは信頼関係を築くことが難しいという壁にぶつかる。相手との関わりが上手くいかないと感じた子どもは、自己表現に問題があるのだと気づく以前に、相手に問題があるのだと感じたり、自分に問題があるのだと感じることが多い。相手との違いをマイナスにとらえたり、自己評価が低いという特徴がみられる。時に、タイプを途中で変更することに努力する人に出会うことがある。タイプの変更が絶対にムリかとも思わないけれども、その道のりはとてもとても長いようにみえる。今のところの経験値から推測すると、はじめて関わる人間関係がその人の人生さえも左右すると言っても言い過ぎではないかもしれない。
私自身の年金も危ういのに、子どもに財産を残してあげることはかなり厳しい。その想いをめぐらせて行き着いた答えは、子ども自身に、楽しく暮らせる能力や苦難を乗り越える能力をプレゼントすること。財産はいくらあってもつきる時がくる。けれども、子ども自信の中に宿るものであったら、子どもの子どもも助けることができるかもしれない。そこに上手く到達してくれるかはわからないけれど、数々の人生の壁にぶつかった時に、手をさしのべてくれる人の数が多ければ多いほど私は安心して次の世に旅立つことができると思いつつ日々子どもと接している。
松田記