立田慶裕先生の基調講演

(1)知識基盤社会の生涯学習

 農業社会→工業社会→情報社会を経て、現代は知恵を出し合ってつくりあげていく知識基盤社会という段 階にきている。そこでは、既存の知識や技術の受動的 な学習から、新たな知識を能動的に作る学習が求められる。個人の主体的な意思により、自分の能力や時間を他人や地域、社会のために役立てようとする自発的 な活動への参加意識を高めつつ、自らが国づくり、社会づくりの主体であるという自覚と行動力、社会正義を行うために必要な勇気、「公共」の精神、社会規範 を尊重する意識や態度などを育成していく必要がある。

 

 

(2)キー・コンピテンシー 国際標準としての生きる力

 

 上記の知識基盤社会において、下記3つのキー・コンピテンシーが特に重要な要素である。

▼個人形成のコンピテンシー(自立的に活動すること)→【自己形成力】展望力、計画力、表現力

▼人間関係のコンピテンシー(社会的に異質な集団で交流すること)→【人間関係力】対話力、協働力、解決力

▼道具活用のコンピテンシー(道具を相互作用的に用いること)→【道具活用力】言葉の力、知識・技能、テクノロジー

小 学校高学年くらいには、自分のルール(道徳心=モラル)を持って生きていく子どもとそうでない子どもに分かれていく。自分で自立していける青年を育てるこ とが大切である。自立するということは人間関係を上手くこなしていく能力を身につける必要がある。自己形成力を基礎に、人間関係を築く人間関係力が必要と される。そして、自己を人間関係の中で表現するために道具活用力が必要となってくる。

 

(3)発達資産という視点で地域を育てるー健康教育・読書教育・キャリア教育

「自分でルールをつくり、経済的な力をもち、親から離れていける能力をもつ人」は、これまでの財産とは違った側面での知識的な資産だ と考えて、これを発達資産と呼ぶ。地域、学校、家族の発達資産を増やすことによって、人々が学習しやすい環境の資産を確保し、個人個人の発達資産を増やす ことが重要である。経済問題につかっている人は、生活維持のための行動をとらなくてはならないために自由に行動することは難しい。そこで、比較的自由に行 動しやすい団塊世代が、「下の人が生きやすい、協働できる社会」を考えていく役割を果たすことが望ましいと考える。

【主な著書】

『家庭・学校・社会で育む発達資産ー新しい視点の生涯学習』編著、北大路書房

『教育のシナリオー未来志向による新しい学校像』OECD編、監訳、明石書店

『キー・コンピテンシーー国際標準の学力をめざして』ライチェン他著、監訳、明石書店

『教育研究ハンドブック』立田慶裕編、世界思想社

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